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酪農は儲からない?4つの理由と廃業増加による酪農業界への影響と課題

酪農は儲からない?4つの理由と廃業増加による酪農業界への影響と課題

「酪農は儲からないの?」「酪農家が廃業したらどんな影響がある?」

日本の酪農業界は、消費者の牛乳離れや飼料価格の高騰、さらに設備投資の負担増加など、さまざまな要因によって、厳しい状況に直面しています。その結果、多くの農家が離農しているのが現状です。

この記事では、酪農家が抱える課題とその背景、酪農業界が直面する課題ついてくわしく解説します。日本の酪農業の厳しい現状を理解し、酪農の役割や未来への影響を考えてみましょう。

酪農家が儲からないと言われる4つの理由

酪農家が儲からないと言われるのには、以下の4つの理由があります。

・牛乳消費量の低下
・飼料確保を輸入に頼り飼料価格が高騰
・設備投資による借入の負担の増加
・高齢化や後継者の不足による生産力の低下

それぞれ、くわしく解説していきます。

牛乳消費量の低下

酪農家が儲からないと言われる原因の1つ目が、牛乳消費量の低下です。1996年をピークに、牛乳の消費量は減少傾向にあります。

冬から春にかけて生産量が増える一方で、学校の長期休暇と消費量の低下が重なるため、牛乳が余りやすくなるのです。牛は毎日乳しぼりをしないと病気になってしまうため、生産量の調整が難しく、消費量の減少が収益に影響を及ぼします。

参考:牛乳スマイルプロジェクト|農林水産省畜産局
参照:牛乳の消費動向について|農畜産業振興機構

飼料確保を輸入に頼り飼料価格が高騰

酪農家が儲からない原因の1つは、飼料価格の高騰です。

日本の酪農業では、飼料の自給率が26%程度と低く、大部分を輸入に依存しています。飼料の主な原料であるトウモロコシの価格は、世界情勢や原油価格の高騰の影響を受け大幅に上昇しやすいです。

具体的には、2020年9月には1トン当たり65,638円だった飼料価格が、2022年10月には1トン当たり101,196円にまで上昇しました。このような飼料価格の高騰は、経営コストの約半分を占める飼料費を押し上げ、酪農家の収益を圧迫します。

しかし、急激な飼料価格の高騰による酪農家の負担を軽減するために、国から臨時的な補填金が給付される場合もあります。補填金がある場合は、自治体に申請して負担を軽減させましょう。

参照:配合飼料工場渡価格の推移|農林水産省
参照:飼料価格高騰緊急対策について(令和5年3月)|農林水産省
参照:飼料をめぐる情勢(イラスト版)|農林水産省

設備投資による借入の負担の増加

酪農を経営していくために、設備投資はかかせません。しかし、資金の準備が足りずに借入が増加している酪農家の方もいます。

酪農業では次のような設備投資が必要です。

・搾乳機
・牛舎の建設
・飼料管理システム

さらに、これらの設備の維持費や修繕費も発生します。

期待通りの収益が得られない場合、借入金の返済が経営を圧迫し、経済的に厳しい状況に追い込まれることがあります。

参照:スマート農業技術カタログ(畜産)|農林水産省

高齢化や後継者の不足による生産力の低下

酪農業において、高齢化や後継者不足による生産力の低下も問題です。酪農業界では、若い世代の離農が進み、後継者不足が深刻化しています。令和4年の離農者数は794人ですが、新規就農者数は73人となっています。離脱要因の割合は、高齢化が30%、後継者不足が8.8%です。

とくに家族経営の農家では、事業の継続が困難になり、生産力の低下が避けられません。作業量の減少が生産力に直結することで収益の減少を招くため、経営の厳しさが増しています。

参照:令和5年農業景況DIは、マイナス幅が縮小~ 生産コスト高が継続、令和6年農業景況DIも引き続きマイナス幅縮小の見通し ~|株式会社日本政策金融公庫

参照:畜産・酪農をめぐる情勢|農林水産省 畜産局

廃業を検討する酪農家が6割|簡単に辞められない理由

廃業を検討する酪農家が6割

ある企業の調査では、廃業を検討する酪農家が全体の6割です。しかし、それでも辞められず、厳しい状況で続けている酪農家もいます。経営が厳しくなった原因と簡単に辞められない理由を解説していきます。

参照:日本の酪農経営 実態調査2023 日本の酪農家の85%が赤字経営 その内4割以上が月額「100万円以上」の赤字に|一般社団法人中央酪農会議

コロナ禍や飼料価格の高騰で廃業を検討する酪農家が急増

近年、酪農家の経営環境は一層厳しくなり、廃業を検討する酪農家が増加傾向です。

とくに、コロナ禍による学校の休校が相次いだ際には、牛乳の消費が急激に減少し、大量の牛乳が廃棄される事態が発生しました。これにより、多くの酪農家が経営に打撃を受けています。

さらに、世界情勢の影響をうけ、飼料価格が急騰しています。輸入に頼る日本の飼料市場では、世界情勢の影響を大きく受けやすく、価格が高騰すると経営コストが大幅に増加している現状です。これらの要因が重なり、廃業を検討する酪農家が急増しました。

実際に、2021年と2022年にはそれぞれ全国で約500戸の酪農家が離農し、2023年にはその数が816戸にまで増加しています。

参照:配合飼料工場渡価格の推移|農林水産省
参照:酪農経営の早期改善に向けて|中央酪農会議

生活の維持や借金返済のため簡単には辞められない

牛乳消費量の低下や飼料価格の高騰などで経営が厳しくなり、廃業を検討しても、簡単に辞められない酪農家もいます。

生活の維持や借金返済などがあるからです。酪農を辞めた場合、収入がなくなり、日々の生活や借金の返済が難しくなります。そのため、多くの酪農家が厳しい状況に耐えながらも、辞めずに続ける選択肢を選んでいるのが実情です。

また、「日本の食の基盤を維持する」という強い意志を持ち、辞めることに強い抵抗感がある酪農家もいます。酪農業は、日本の食料自給率を支える重要な産業であり、廃業でその基盤が揺らぐことを心配する酪農家もいます。

参照:一般社団法人 中央酪農会議 日本の現役酪農家に聞く、「日本の酪農経営実態調査(2023)」|マネーフォワード

酪農業に対する日本の問題点

酪農業に対する日本の問題点は以下の2つです。

・生産コストの割に販売価格が安い
・政府の支援策の限界

それぞれくわしく解説していきます。

参照:畜産農家・関係団体に対する支援|農林水産省

生産コストの割に販売価格が安い

酪農業が厳しい理由の一つに、生産コストと販売価格のバランスが挙げられます。日本の酪農業界では、飼料価格が高騰しても、牛乳や乳製品の販売価格は簡単には上がりません。

なぜなら、牛乳は「物価の優等生」といわれるためです。牛乳は、飼料価格が上がっても生産者の努力により低価格を維持していました。しかし、その価格調整の難しさが、酪農家の利益を圧迫しています。

そして、物価高騰の波を受けて、2022年11月と2023年8月の2回にわけて、牛乳の値上げがおこなわれています。

参照:8月から牛乳一斉値上げ 大手乳業メーカー3社 今年はすでに3万品目を超える過去最大級の値上げラッシュ|TBS NWES DIG

政府の支援策の限界

酪農はこれまで何度か危機的な状況がありました。そのたびに、政府はこれまでにも酪農業を支援するための対策をしてきましたが、その効果は一時的です。

たとえば、2014年のバター不足のときの対応では、乳牛を増やし安定しました。しかし、コロナ禍で需要が再び減少し、廃業に追い込まれる酪農家もいました。あらゆる補助金や支援金の制度もあるため、自分のニーズに合った制度をうまく利用する必要があります。

参照:酪農関係事業等一覧表|農林水産省
参照:令和6年度 畜産物価格関連対策等の概要について|農業産業振興機構

酪農業の年収は経営の規模による

酪農業の年収は経営の規模による

酪農業の収入は、働き方や経営の規模によって異なります。働き方は、大きくわけて社員と経営者の2種類です。

社員 経営者
・年収平均は200~400万円程度

・農場の規模で金額が変わる

・牛の世話や搾乳などの実務がメイン

・年収平均は300~1400万程度

・北海道とそれ以外で金額が変わる

・コスト管理と効率のいい運営がメイン

社員は、牛の数が10数頭くらいの小規模な農場と、機械を導入した大規模な農場で金額が変わります。大規模な農場で役職がつくと、中小企業の役員クラスの給料をもらう人もいるでしょう。

経営者は、北海道では平均年収が約1400万円ですが、それ以外の地域では平均320万円と、金額に差があります。理由は、北海道の方が広くて安い土地が手に入りやすく、大規模な経営がしやすいことが考えられるからです。

ほかにも、酪農ヘルパーという働き方があります。これは、酪農家が休みを取りたい場合に、代わりに牛の世話をおこなう仕事のことです。単発でいろいろな農場で働けるためさまざまな経験ができます。

酪農家として働く場合は、自分が希望する働き方は何かを考えて仕事を選ぶと満足のいく仕事ができるでしょう。

参照:酪農家とは?年収は?仕事内容と酪農経営の基本のき(後編)|ノベルズウェーブ

廃業増加による日本の酪農業への影響

日本の酪農業は、深刻な経営難に直面しています。

コロナ禍では学校の休校が相次ぎ、牛乳の大量廃棄が問題となりました。また、国際情勢の影響が続く中、乳製品の価格が高騰しています。2022年11月には、牛乳で7円/kgの値上げが実施されました。このような経済環境の悪化は、とくに中小規模の酪農家に負担を強いており、廃業に追い込まれる酪農家が増加しています。

もし廃業がさらに進めば、日本国内での牛乳供給が不足する可能性も懸念されます。すでに、日本の酪農家の約85%が赤字経営を強いられており、その中でも4割以上の酪農家が月額100万円以上の赤字を抱えている状況です。

こうした厳しい現状は、消費者に対する牛乳や乳製品の供給安定にも影響を与える可能性があり、酪農業界全体の早急な対策が求められています。

参照:酪農経営の早期改善に向けて|中央酪農会議
参照:日本の酪農経営 実態調査2023 日本の酪農家の85%が赤字経営 その内4割以上が月額「100万円以上」の赤字に|共同通信PRワイヤー

日本の酪農業|今後の課題と解決策

日本の酪農業

酪農業の発展のためには、複数の課題への対処が必要です。

具体的な解決策は以下の4つです。

・自給飼料を生産する
・牛乳消費を促進するための商品やレシピを開発する
・機械を導入し生産コストを低下させる
・新規就農者の確保

これらの取り組みを通じて、日本の酪農業が直面する問題を克服し、持続可能な未来を築くことが期待されるでしょう。それぞれくわしく解説していきます。

参照:わが国酪農乳業の展望ある未来に向けた戦略ビジョン|一般社団法人Jミルク
参照:酪農経営の早期改善に向けて|中央酪農会議

解決策1|自給飼料を生産する

飼料を輸入に頼ると、世界情勢の影響を受けやすく、飼料コストが上昇する可能性があります。その結果、経営を圧迫するでしょう。

問題解決のために、国内で飼料を生産する取り組みが必要です。飼料の自給率をアップできれば、国際情勢の影響を受けにくくなり、安定した経営が可能となります。

また、地域の農地を活用して飼料を生産することで、地元経済が活性化するでしょう。

参照:飼料|農林水産省

解決策2|牛乳消費を促進するための商品やレシピを開発する

日本国内の牛乳の消費量は、人口の減少により、1996年を境に減少しています。

牛乳を使用した商品やレシピの開発により、誰でも気軽に牛乳を活用できるため多くの牛乳を消費できるでしょう。消費者に牛乳の魅力を再認識してもらえると、バランスの取れた生乳の処理や流通を実現できるでしょう。

参照:牛乳・乳製品を使ったレシピ(外部リンク)|農林水産省

解決策3|機械を導入し生産コストを低下させる

酪農に従事する人が減少しているため、生産コストを下げる必要があります。そのためには、機械の導入が効果的です。

自動で乳搾りを行うロボットや自動で餌を供給するシステムなどの導入で、人的コストを削減し、作業効率を向上させることが可能です。これにより、酪農家はほかの重要な業務に集中できるため生産性が向上します。

機械の導入には資金が必要ですが、一度導入すれば大幅な人的コストの削減が可能となるでしょう。

参照:スマート農業技術カタログ(畜産)|農林水産省

解決策4|新規就農者の確保

日本の酪農業は、高齢化が進んでおり、経営者の平均年齢が60歳を超えています。このままでは後継者不足が深刻化し、業界全体が縮小してしまう恐れがあります。

そのため、新規就農者を積極的に確保し、酪農業の未来を担う人材の育成が急務です。新しい技術や知識を持った若者が酪農業に参入することで、業界全体の活力が増し、持続可能な経営が実現するでしょう。

これらの解決策を総合的に実施することで、日本の酪農業は現在の課題を乗り越え、明るい未来に向けた一歩を踏み出せます。

参照:都府県酪農における新規参入の現状と課題|農畜産業振興機構

まとめ

日本の酪農業は、さまざまな課題に直面しており、酪農家を続けることが年々厳しくなっています。牛乳消費量の減少や飼料価格の高騰、機械化の遅れ、後継者不足による高齢化などの問題により、廃業を選ぶ酪農家が増えている現状です。

これらの課題を解決するためには、飼料自給率の向上や牛乳消費を促進する新商品の開発、機械導入による生産コストの削減、新規就農者の確保が必要です。

さらに、消費者が積極的な牛乳の購入により、酪農家を支え、持続可能な酪農業が期待されています。

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