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【徹底解説】肉用牛農家とは|具体的な仕事内容・やりがいや大変さ・将来性を知ろう

肉用牛農家とは|具体的な仕事内容・やりがいや大変さ・将来性を知ろう

「肉用牛農家」という言葉に、あまり聞き馴染みがない方もいるのではないでしょうか。

肉用牛農家は、私たちの食生活を支える上で非常に重要な役割を担っています。直接顔を合わせずとも、普段私たちが牛肉を食べられているのは、彼らのおかげといえます。

本記事では、肉用牛農家の仕事内容ややりがい、大変さ、将来性を解説します。肉用牛農家について網羅的に理解したい方は、ぜひ最後までご覧ください。

肉牛農家とは

肉牛農家とは

肉用牛農家とは、私たちが普段食べている牛肉を生産する仕事です。肉用牛農家は、大きく「繁殖農家」「肥育農家」「一貫経営農家」という3つのタイプに分けられ、それぞれが異なるかたちで専門牛肉生産に関わっています。

まず、繁殖農家は母牛を飼育して子牛を生産することに特化しており、生まれた子牛を一定期間育てた後、市場などを通じて肥育農家へ販売します。

一方、肥育農家は、繁殖農家から購入した子牛や自身で生産した子牛(一貫経営の場合)を、肉質が良くなるようにボディコントロールをしながら丹精込めて育て上げ、食肉処理場へ出荷する役割を担います。一貫経営農家は、この繁殖から肥育までの一連の工程をすべて自身の経営内で行う農家を指します。

肉用牛農家の具体的な仕事内容

肉用牛農家の具体的な仕事内容

肉用牛農家の仕事は、牛という生き物を相手にするので、日々変化する状況に対応しながらさまざまな作業をおこなう必要があります。なぜなら、牛は非常にデリケートな生き物なので、毎日の丁寧なケアが牛肉の品質に直結するからです。

ここでは、肉用牛農家の具体的な仕事内容について解説します。一つひとつ理解を深めましょう。

早朝の見回り・健康チェック

肉用牛農家の朝は早く、牛舎の見回りから一日がスタートします。牛は言葉を話せないので、牛の病気予防のためにも、日々の細やかな観察が欠かせません。

見回りをするときは、牛の数を確認するだけでなく、牛が元気な様子なのかを一頭ずつ注意深く観察します。餌の食べ残しがないか、糞の状態はいつもと変わりないか、呼吸は正常か、元気がない様子はないかなど、細かな変化も見逃さないようにチェックすることが大切です。

牛の給餌

牛に餌を与える作業は、特に重要な仕事のひとつです。肥育農家の場合、牛の成長段階や健康状態に合わせて、通常1日に2回から4回程度に分けて餌を与えます。餌の種類は、「粗飼料(そしりょう)」と「濃厚飼料(のうこうしりょう)」の2種類に分かれます。

粗飼料は牧草や稲わらなどが主体で、牛の胃の働きを正常に保つために不可欠な主食です。一方、濃厚飼料はトウモロコシの実や大豆、麦などを配合したもので、成長に必要なエネルギーやタンパク質を効率よく摂取させるために与えられます。

なお、栄養バランスをより整えるために、ビタミンやミネラルなどのサプリメントを追加するケースもあります。

牛房(ぎゅうぼう)の掃除

牛舎の中は、牛たちが過ごすスペースとして柵で囲われた「牛房(ぎゅうぼう)」と呼ばれる区画に分けられています。この牛房の床には、牛が快適に過ごせるように、そして糞尿を吸収するために、稲わらやおがくず、もみがらなどを利用した「敷料(しきりょう)」が敷き詰められています。

牛たちが常に清潔で乾燥した環境で過ごせるように、この敷料を定期的に新しいものに入れ替えたり、汚れた部分を取り除いたりする清掃作業も、大切な仕事のひとつです。衛生的な環境を保てば、病気の予防にもつながります。

ふん尿処理

毎日大量に出る牛の糞尿の処理も、欠かせない作業です。集められた糞尿は、堆肥(たいひ)舎と呼ばれる専用の施設に運び込まれ、そこで時間をかけて発酵させ、良質な堆肥へと作り替えられます。

作り替えられた堆肥は、主に自身の牧草地や飼料作物の畑の肥料として利用されます。さらに、地域の稲作農家や野菜農家などに供給して、地域内での資源循環に貢献する農家さんも少なくありません。環境に配慮した農業を経営するうえでも、糞尿処理は重要な意味を果たしています。

繁殖管理(繁殖農家の場合)

繁殖農家にとっては、母牛から健康な子牛を安定的に生産することが経営の根幹となります。多くの繁殖農家では、経営の安定を図るために、母牛に毎年1頭の子牛を産ませる「1年1産」を目指しています。

これを実現するためには、発情の兆候を見逃さず、適切なタイミングで人工授精を行ったり、種雄牛による自然交配を管理したりする必要があります。また、無事に分娩(ぶんべん)が終わった後も、母牛は比較的早い段階(約20日後)で次の発情が訪れて妊娠が可能になるので、その兆候をしっかりと観察し、次の繁殖サイクルへとつなげていくことが大切です。

肥育管理(肥育農家の場合)

肥育農家の主な役割は、導入した子牛を肉質の優れた成牛へと育て上げることです。最終的な牛肉の品質、つまり味や柔らかさ、脂肪の入り具合(サシ)などは、牛が食べてきた飼料の内容に大きく左右されます。

肥育農家では、牛の月齢や体重といった生育段階に応じて、粗飼料と濃厚飼料の種類や配合割合を細かく調整し、栄養管理をおこないます。また、牛にストレスを与えないように、飼育環境を整えることも非常に重要です。例えば、牛が落ち着いて過ごせるように配慮したり、常に清潔な状態で餌を食べられるように飼槽の管理を徹底したりすることも、高品質な牛肉を生産するうえで大切な肥育管理のひとつです。

肉用牛農家のやりがいとは

肉用牛農家のやりがいとは

肉用牛農家は、体力的な負担が大きく、収入的にも不安定になりやすい仕事です。しかし、それらを乗り越えた先で味わえるやりがいがあるのも事実です。

ここでは、肉用牛農家のやりがいについて解説します。一つひとつ理解を深めていきましょう。

牛の成長を間近で見守れる

生まれたばかりのか弱い子牛が、日々の世話を通じてたくましく成長していく姿を、すぐそばで見守れるのは大きなやりがいのひとつです。愛情を込めて世話をする中で、牛がすくすくと育っていく様子を目の当たりにできるのは、何物にも代えがたい喜びであり、他ではなかなか味わえない深い達成感を与えてくれます。

もちろん、手塩にかけて育てた牛を出荷する際には、寂しさを感じることもあります。しかし、その牛が美味しい牛肉となり、多くの人々の食卓に届き、食べた人を幸せな気持ちにさせてくれることを想像すると、「この牛を立派に育てて良かった」という誇りと満足感を得られる瞬間でもあります。

自然の中でのびのびと働ける

肉牛農家の仕事場は、広大な牧草地や緑豊かな自然に囲まれた場所にあります。都会の喧騒から離れて、澄んだ空気の中で牛たちと過ごす時間は、自然との一体感を感じられるひとときでしょう。

季節の移り変わりを肌で感じながら、動物たちと共に過ごす時間は、ストレスの多い現代社会において、心身ともにリフレッシュできる貴重な機会を与えてくれます。このような環境は、都会での生活ではなかなか得られないかけがえのない体験です。

自分の育てた牛肉が評価される

愛情と手間暇をかけて育て上げた牛が、最終的に牛肉として市場に出荷され、その品質が高く評価された時、肉牛農家は大きな喜びと誇りを感じます。

例えば、自身が育てた牛の肉が有名なレストランで特別なメニューとして提供されたり、地域の品評会で優秀な成績を収めて賞を受賞したりした時は、これまでの努力が報われる瞬間です。

品質の良い牛肉を生産することは、単に収入を得るためだけでなく、自身の技術と情熱が認められた証であり、農家としてのやりがいを感じるきっかけとなるでしょう。

肉牛農家の大変なこととは

肉牛農家の大変なこととは

肉牛農家の仕事には多くのやりがいがある一方で、厳しい側面も存在します。近年は搾乳ロボットや自動給餌機を始めとした機械化が進んでいますが、依然として多くの作業は人の手でおこなわれており、体力的な負担が大きいことは否定できません。

また、動物である以上、病気や怪我は予期せぬタイミングで発生しますし、出産が近い母牛がいれば昼夜を問わず見守りが必要になるケースもあります。そのため、一般的な会社員のように長期間の休みをまとめて取ることは難しく、年中無休に近い働き方になるのも珍しくありません。

さらに、牛舎の清掃や糞尿の処理など、土や堆肥の上での作業が多いので、衣服や体が汚れやすい環境であることも事実です。こうした点に抵抗を感じる人にとっては、大変だと感じる場面が多いかもしれません。

肉用牛農家の現状と課題について

現在の日本の肉用牛農家は、産業全体としていくつかの重要な課題に直面しています。一方で、これらの課題を克服し、持続可能な経営を目指すための新たな取り組みも進められています。

ここでは、肉用牛農家の現状と課題について具体的に解説します。一つひとつ見ていきましょう。

後継者不足が深刻化している

多くの農業分野と同様に、肉用牛農家においても高齢化と後継者不足は深刻な問題です。農林水産省の調査によると、日本の基幹的農業従事者の平均年齢は上昇傾向にあり、令和5年には68.4歳となっています。

若手の働き手が不足すると、単に労働力が減少するという問題だけでなく、新しい技術の導入や経営の革新が進みにくくなるという側面もあります。さらに、高齢の農家がリタイアする際に、後継者が見つからずに廃業を選択せざるを得ないケースも少なくありません。リタイアを機に耕作が放棄され、結果的に地域の景観や生態系にも悪影響が出ると言われています。

参考:農林水産省「肉用牛・食肉政策の現状と課題の整理」35ページ目

飼料価格が高騰している

近年、肉牛の餌となる飼料の価格が高騰しており、多くの農家の経営を圧迫しています。日本は海外からの飼料輸入に依存していますが、飼料の価格が高騰している主な要因は、以下のようなものが挙げられます。

農林水産省のデータによると、飼料費の高騰による影響で、令和4年の子牛1頭あたりの生産コストが前年に比べて上昇したことが明らかとなりました。

この厳しい状況に対応するために、輸入飼料への依存度を下げるために、自給飼料(牧草や飼料用米など)の生産量を増やしたり、より少ない飼料で効率よく牛を太らせるための飼養管理技術を改善したりする取り組みが進められています。

参考:農林水産省「肉用牛・食肉政策の現状と課題の整理」37ページ目

ICT技術の導入が進んでいる

人手不足や作業負担を軽減するために、ICT(情報通信技術)の導入が畜産の現場でも進みつつあります。具体例としては、牛の首や耳にセンサーを取り付け、体温や活動量、反芻(はんすう)時間などをリアルタイムでモニタリングするシステムが挙げられます。

これによって、発情の兆候や病気の初期症状の早期発見が可能になり、適切なタイミングで対応できるようになります、また、分娩監視カメラやスマートフォンで遠隔から牛舎の様子を確認できるシステム、自動給餌機といったシステム開発も進んでいます。

参考:農林水産省「肉用牛・食肉政策の現状と課題の整理」36ページ目

ブランド化の必要性が高まっている

消費者に選ばれる魅力的な牛肉を生産し、収益性を高めるためには、単に牛肉を生産するだけでなく、その価値を高める「ブランド化」の取り組みがますます重要になっています。

地域の気候風土や歴史、特定の品種やこだわりの飼料といった、その地域ならではの特性を生かした独自のブランド牛肉を開発し、他の産地との差別化を図る動きが全国で見られます。

近年では、単に見た目の「サシ」の多さだけでなく、牛肉の美味しさに科学的に関連するとされる脂肪酸の組成(オレイン酸の割合など)を分析し、それを品質の指標としてブランド価値を高めようとする動きも普及しています。

参考:農林水産省「肉用牛・食肉政策の現状と課題の整理」49ページ目

肉用牛農家になるために必要なスキル・キャリアパス

肉用牛農家として成功するためには、単に動物が好きという気持ちだけでは難しく、牛の飼育に関する専門的な知識やスキルが必要不可欠です。

ここでは、具体的にどのようなステップを踏んで肉用牛農家を目指せるのかについて解説します。

大学や畜産系の専門学校で学ぶ

肉用牛農家になるための王道パターンが、農学部・畜産学科がある大学や専門学校に通うことです。学校に通えば、家畜生理学や栄養学、繁殖学、衛生学といった基礎知識から、具体的な飼料の配合設計や健康チェックのコツ、さらには経営学に至るまで、幅広く学べます。

座学だけでなく、実習を通じて実践的なスキルを習得できる機会も多いので、卒業後の就農に向けた準備を着実に進められます。また、同じ目標を持つ仲間や農業に精通した教員とのつながりを築けるのも大きなメリットです。

農業法人や牧場で研修を受ける

学校で学ぶ以外にも、農業法人や個人の牧場などで研修生として働きながら、現場で経験を積むという方法もあります。

現場で経験を積めば、牛の扱い方や設備のメンテナンス、季節ごとの作業内容などの実務経験を、先輩農家の指導を受けながら身につけられます。

また、一定期間働けば、肉牛農家の仕事の厳しさや楽しさを肌で感じられるので、本当に自分がこの仕事に向いているのかどうかを見極める良い機会にもなるでしょう。

肉用牛農家を営んでいる家業を継ぐ

もし実家が肉用牛農家を営んでいる場合は、高校卒業後などに進学や他の就職を選ばず、そのまま家業を継いで肉用牛農家になるという道もあります。

幼い頃から牛のいる環境に慣れ親しみ、家業の手伝いなどを通じて、自然と仕事内容や基本的な知識が身についている場合も多いでしょう。しかし、これまで本格的に家業に関わってこなかったり、動物に関する専門知識に自信がなかったりする場合は、いざ経営を担う立場になった際に思わぬところでつまずいてしまう可能性もあります。

そのため、家業を継ぐ場合であっても、大学や専門学校で知識を学んだり、牧場で研修を受けたりする方が良いかもしれません。

まとめ

肉牛農家とは、繁殖、肥育、一貫経営という異なる役割を担いながら、私たちの食卓に欠かせない牛肉を生産する、社会にとって重要な仕事です。

体力的な負担が大きかったり、長期休暇を取りにくかったりとさまざまな大変さはありますが、丹精込めて育てた牛肉が市場や消費者から評価される達成感は、この仕事ならではの大きなやりがいです。

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